(旧)カクかく

いつも側に寄り添っていて、人生を豊かにしてくれる文房具。そんな素敵な文房具をゆるく紹介します。

活版印刷、楽しいですよ「organ活版印刷室」

あなたは活版印刷を知っていますか?
ある程度の世代の方はご存じかと思いますが、若い人は知らないですよね。
ひょっとすると、ポプラ文庫のほしお さなえ著「活版印刷日月堂」で知った方も見えるかな。

先日、岐阜で活版印刷を行っているorgan活版印刷室さんに遊びに行ってきたので、今回は文具とはちょっと違うけど、活版印刷について書いていこうと思います。
organkappan.net


  • 印刷の歴史

そもそも活版印刷とは何かというと

凸版印刷の一種で、金属や木に文字を彫り込み判子状にしたもの(活字)を並べて文章にした板(活版、組版)を作り、それに塗料を塗って印刷すること。

wikipedia より

活版印刷は、世界史の授業で習った中国4大発明の一つの印刷技術がベースになっています。
当時は一枚の板で作った木版印刷だったようです。
年代がはっきりしている最古の印刷物は、8世紀だそうです。

それから11世紀頃に同じく中国で一文字を判子状にした「活字」を並べて印刷されるようになりました。

その後、1960~70年代に写真の技術を応用した「写真植字機」(通称:写植)が登場し、現代ではDTP(Desktop publishing)によるデジタルな世界になっています。

一文字毎に判子状になった物である「活字」を拾います。
下の写真は一部ですが、organ活版印刷室さんの活字の棚です。
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一部の棚ですがこの棚の全てに活字があります。
日本語には、平仮名・片仮名・漢字と洒落ならないほどの文字数があります。
しかも判子と同じなので、同じ文字でも文字の大きさ毎にそれぞれあるわけですから、文字通り活字に溺れます。


下の写真は、活字の棚から拾ってきた僕の名前の活字たちです。
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これを下の写真のようにレイアウトして版を組み上げます。
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空間が欲しい場合は、文字が彫られていないインテルという物を入れます。
また版を分ければ、多色摺りも出来ちゃいます。


最後に、印刷します。
印刷は動画の方が分かりやすいので、こんな感じです。
(ちょうどorgan活版印刷室さんが動画を上げてくれてました)
www.facebook.com

この機械、本当に良く出来ていています。
上部の円盤の部分にインキを乗せるのですが、ハンドルを上下に動かすとインキを伸ばしながら円盤が回転していくんですよ。
インキを均等に付けるために、非常にシンプルながら良く出来ていると、本当に関心しました。


  • 最後に

こんな手間暇の掛かる印刷方法が今改めて注目されています。
活版印刷を知らないぼくらの世代からすると、新鮮なんですね。
それに凸版印刷なので、文字の部分が凹んでいて何とも言い表せない独特の雰囲気があります。
※昔の職人さんは、文字は凹まないがしっかり印字される印刷を善としていたそうです。
 なぜなら圧を掛けて凹むように印刷していると、鉛で出来た活字が早く摩耗してしまいますからね。

文字自体も、オフセット印刷よりもインクが微妙に滲むためか、読みやすいように感じます。

現代では活版印刷で新聞や本を印刷することは無いのですが、ショップカードや名刺を活版で印刷される方も多いのだとか。
以前、organ活版印刷室さんのワークショップで名刺を作成したのですが、活字を拾うのがめちゃくちゃ大変でしたがそれ以上に楽しかったです。

※なお今回の写真は全てorgan活版印刷室さんの承諾済みです。



活版印刷の小話 ~
以前Webの記事で、なぜMicosoft WordやJust Systemの一太郎のフォントサイズがなぜ標準で10.5ptという中途半端な数字なのか、という記事がありました。
なぜWordのデフォルトフォントサイズは「10.5」なのか? - ねとらぼ

答えは活版印刷の時の名残なんですね。
日本で公文書の作成の際に使われた文字の大きさが活字の「5号」サイズで、この5号サイズとほぼほぼ同じフォントサイズが「10.5pt」なんですね。